論点
https://bbarchive240815a.peatix.com/ 当日語り切れなかった部分を含めて資料を公開する。 宇宙・動物・資本主義 作者:稲葉振一郎 晶文社 Amazon *自己紹介稲葉振一郎明治学院大学社会学部教授専攻はとりあえず社会哲学英語の学術論文は宇宙倫理学に集中し…
新刊の続きとして 市民社会論の再生: ポスト戦後日本の労働・教育研究 作者:稲葉 振一郎 春秋社 Amazon =================== 1990年代の劈頭を飾った東京大学社会科学研究所の全体研究は『現代日本社会』(報告書は東京大学出版会刊)で…
マッカスキルを読んで面白いと思ったのは、長期主義は新しいタイプの終末論というか、歴史目的論だなというところ。コジェーヴを引き継いだフランシス・フクヤマの「歴史の終わり」論なんかもあるし、そうするとそれらを踏まえた東浩紀の動物化論も終末論と…
繰り返しになるが、社会契約論の図式は、神の立法とはことなり人々の合意へと国家の存在理由をおおいに「民主化」しているように見えるが、「あらかじめ先取りされた、予定された結果としての目的が原因となる」という目的論的図式は共有している。モンテス…
もう少し「回顧的倒錯」の話をしよう。 遡るならばニーチェということになるのだろうけれど、フーコーの受容とともに我々は「系譜学」という方法になじんだ。永井均の言い回しを借りればそれは「現在の自己を成り立たせていると現在信じられてはいないが、実…
王寺賢太『消え去る立法者』はディドロ研究者として世界の最前線を担う著者がディドロについて論じるための前振りとしてモンテスキュー、ルソーに遡ったもので、同じ主題を継承してディドロを論じる続篇が予告はされているものの、その概略は終章に提示され…
2023年5月30日(火) 21:56 稲葉振一郎 木庭先生 ざっと拝読しましたが、やや気になるところがございます。資本主義の本義は資産の商品化、市場化というところにあり、なおかつそれが過度の投機化によって消耗されることなく守られ、資産のゴーイング・コンサ…
大昔に河出の『文藝』のアンケートに答えたことが触れられていた 「もっと明瞭な殺人否定論はないのですか?」「たしか、いなば先生 @shinichiroinaba が大昔に少年向けに書いたものがあって、まず君には、殺されたくない大事な人たちがいる。ところで他の人…
災害には人為的なものもあれば非人為的なものもある。 人為的な災害について、そのリスクをコントロールするにあたっては、発生を防ぐ・確率を減らす予防・防災があり、起こってしまった場合に損害を補償し原状復帰を目指す回復・復興があり、また起こってし…
拙著『21世紀の資本主義の哲学』ではマルクス、シュンペーター、コルナイの系譜を重視して資本主義の(社会主義その他集権的経済と対比したときの)眼目を「イノヴェーションを伴う/誘発する市場経済」とした。市場で競争する企業はただ単に相場(競争的価…
木庭顕が協力した朝日の記事に対して一部から「今更のヨーロッパ中心史観」「中世・イスラーム無視」とか頓珍漢な噴き上がりがあったようだ。後者については「紙面が限られていることを無視したないものねだり」ですませてもよいし、そもそもイスラームが古…
岸政彦・北田暁大・筒井淳也・稲葉振一郎『社会学はどこから来てどこへ行くのか』という本は日本の社会学の現状についてのよもやま話であり、「社会学は地味な学問なんだから地味にやろうよ」というメッセージを派手にやっているという変な本ですが、その背…
『エドワード・ルトワックの戦略論』を読んでいて開巻早々に驚くべき記述に出くわす。 ここで私が展開する主張は、さまざまな逆説的命題や露骨な矛盾を抱えていても、戦略は必然的に妥当な考えを伴うということではない。むしろ、戦略の全領域が逆説的論理に…
プログラムはこちらだが当日配布資料あり。 佐藤淳二報告への質問 (『人間不平等起源論』でのルソーに「人間と動物を分かつものとしての完全を目指す能力」なるアイディアがあることに触れていた。)1.ルソーが「完成可能性」について考えており、それは…
細かい解説は抜きです。 ========= 「イエスの福音が届かなかったとしたら?」という恐れにはどのような意味があるのだろうか? もちろんここで問題は「イエス」でなくてもよいのだが、それでもイエスにはある種の特権性がある。「普遍性を僭称する…
国家の哲学: 政治的責務から地球共和国へ作者: 瀧川裕英出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2017/08/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 他のコメンターのお二人に比べて素人臭い外在的なコメントを、しかも不十分にしかできなかった…
いうところのアベノミクスの基本的な正しさについて考えてみよう。正しいと考えない人は、どのような条件の下でそれが正しいのか、について考えるというところで妥協してみればとりあえずは同じことだ。そのあとでその条件が実際に満たされているかどうか、…
生煮えで恥を晒すところが多いがちょっと書いてみた。 == 応用哲学会のシンポで若い人たちが報告したヘイトスピーチの言語哲学的解剖はとても面白くて論文になるのが待たれるけど、帰りにちょっと大庭弘継君と話した通りいろいろ難しいところもある。 言語行…
私法レベルでの財産権保障の枠組みが宇宙にストレートに延長されていくことを容認するとしても、それを支える公法的秩序、とりわけ国家主権、国際(公)法風に言うならば管轄権配分の問題は一筋縄ではいかない。 これまで「宇宙物体」といえば基本的に地上か…
『宇宙倫理学入門』には書けなかったことを少し考えてみる。================ よく知られているようにアメリカ合衆国は2015年に商業宇宙打ち上げ競争力法を制定し、月や小惑星など地球外の天体・宇宙空間で発見した資源を、発見者が私的に自…
「新自由主義neoliberalism」という思考停止用語について 何でもかんでも憎らしいものに対してレッテルを貼っているだけではないか? ☆例えば―― バブル崩壊前の日本経済についての理念的モデルとしての「日本的経営」「日本型企業社会」と「産業政策」「護送…
当日配布したものはver.2です。こちらは初公開。 20140405大屋雄裕.pdf 統治と功利作者: 安藤馨出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2007/05/30メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 55回この商品を含むブログ (80件) を見る功利主義ルネッサンス―統治の哲学と…
木庭顕がマルセル・モース、レヴィ=ストロース、そしておそらくはカール・ポランニーを意識しつつ交換echangeというとき、それはいわゆる「贈与交換」のことであるが、ここで大事なことは、この「贈与交換」が時間の流れの中で行われる非対称的な営みである…
柳田国男論作者: 柄谷行人出版社/メーカー: インスクリプト発売日: 2013/10/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (11件) を見る 来年の柳田論の前に初期柄谷の柳田論が公刊。ぱらぱらめくって、やはり初期の柄谷はよい、と買ってしまう。 「序文」にちょ…
当日は入場料負けてもらったかわりに壇上でしゃべらされましたのですがそのフォローアップのメモです。================= 與那覇潤『中国化する日本』の構想の重要な着想源のひとつ(参照文献の中にはあげられていないにもかかわらず、原論文「中国化論序説…
領域権原論―領域支配の実効性と正当性作者: 許淑娟出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2012/02/01メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログを見る 目次 序 論 第1章 取得されるべき客体としての領域主権――様式論 第1節 様式論の特徴――ロー…
(承前) やや繰り返しになるが、確認しておこう。古典的、あるいは共和主義的な「独立」とそれに基づく「自由」とは、財産権秩序の安定についてはその存立の前提としているが、市場経済についてはかならずしもそうではない。それはそもそも市場の外におかれ、…
(承前) ここで今一度概念的な切り分けをしておこう。すなわち、もっとも単純な意味での財産権秩序と、市場経済と、資本主義をそれぞれ概念的に区別した上で関連付けてみよう。 単純な意味での財産権秩序、あるいは私有財産権制度とでもいおうか、この言葉…
(承前) それにしても、共和主義と重商主義の親和性とは、どういうことか? それは必ずしも重商主義の国家主義(エタティズム)的側面に止目しなくとも言えるし、言わねばならないことである。共和主義的な「独立」「自由」の基盤となる財産は市場的取引か…
(承前) 他方で森は一人一人の生身の人間、とりわけ小農や労働者、というミクロな単位においてのみならず、マクロな「国民経済」という単位においても「独立と従属」について考えようとした。レオポルド・エイメリーへの着目(「エイメリーとイギリス帝国主…