論点

ベーシックインカムとベーシックキャピタル――と金融屋

資本主義が嫌いな人のための経済学作者: ジョセフ・ヒース,栗原百代出版社/メーカー: エヌティティ出版発売日: 2012/02/09メディア: 単行本購入: 20人 クリック: 834回この商品を含むブログ (16件) を見るを読んでいて著者ヒースが「ベーシックキャピタルよ…

トークイベント「SFは僕たちの社会の見方にどう影響しただろうか?」感想

既に読まれた方には言うまでもないことだが、伊藤計劃の第二長編『ハーモニー』は第一長編『虐殺器官』の後日談として読むことができる。後者の末尾で暗示されていた大災厄を踏まえて、前者における超福祉管理社会が到来しているのである。 『虐殺器官』の結…

トークイベント「SFは僕たちの社会の見方にどう影響しただろうか?」用メモ

昨日24日の「現代経済思想研究会・特別セミナー 稲葉振一郎・田中秀臣・山形浩生・トークイベント「SFは僕たちの社会の見方にどう影響しただろうか?」」は盛会のうちに無事終了いたしました。お越しくださった皆様、ありがとうございました。 当日のレポはt…

立岩真也『私的所有論』の一解釈

念のためにここから今少し敷衍しよう。まさに不動産からの「立ち退き」のケースについて考えてみる。再開発の波が押し寄せる小汚い下町で、猫の額ほどの土地の上にボロ家が建っている。しかしその土地はまさにその居住者のものだとしよう。あるいは借り物だ…

市民社会から資本主義へ(続「「占有」について」)

かつての日本の市民社会派マルクス主義は、市民社会から資本主義社会への転化を「領有法則の転回」――「労働に基づく所有」から、「蓄積された労働=資本に基づく所有」への転化として捉えた。それは言ってみれば「小ブルジョワ没落史観」である。『資本論』…

「占有」について

いい加減なノート。やっと立岩理論の意義と限界が見えてきた感あり。============================ 昨今の「市民社会」ブームの中ではほとんど忘れ去られていた、戦後日本マルクス主義の一ウィングとしての「市民社会派」はマル…

「労使関係論」とは何だったのか(19)

圷君たちの本を受け取ってちょっとまたまたむずむずしてきたので社会政策論と福祉国家論につきまとめてみる。精密な学説史的考証は後からやればいい。 まあ「社会政策学の復興」は武川正吾先生のやり方ではだめで、かといって圷さんたちのやり方でもダメで、…

教育の存在論(嘘)についての思い付き

教育社会学・教育経済学の学校教育についての理論、その存在論的前提について考えてみよう。 人的資本論はリベラリズム本流のそれと一致する。人間は本性レベルにおいては皆同じであり(かつその本性は不変であり)、違いは後天的に付加されるものである。教…

9月18日日本社会学会シンポジウム・コメント原稿

お約束通りこちらにアップします。当日読み上げられたのは2の冒頭までです。 しかしあのシンポ会場は実にいい意味で不穏であったのに不完全燃焼感著しい。壇上に市野川容孝と安藤馨がそろうというだけで十分アレなのにフロア最後列では小泉義之がいつもなが…

日本のポストモダン教育の原点?(続)

後半書き直し。この後にまとめが入る。=========== このように考えたとき、森の没する(2006年)その更に20年ほど前(1987年)に倒れた職業教育研究者、佐々木輝雄の到達点は極めて興味深い。森については、その活躍時期のみならずその仕事の内容…

日本のポストモダン教育学の原点?(続)

http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20100720/p3前半を書き直してみた。 日本の人文社会科学における「ポストモダニズム」の本格的受容はいつごろ始まったのであろうか? 「1968年」の余燼冷めやらぬ中、フランス文学出自の書き手を中心として、ジャック…

復習

ハンナ・アレント的、あるいは藤田省三的な意味での「全体主義」概念を軸として、自分のこれまでの規範理論的な作業を振り返ると、以下のようにまとめられる。 『リベラリズムの存在証明』においては、非常に強い意味でカント的な――「独我論者同士の相互承認…

内閣府「社会保障・税一体改革の論点に関する研究報告書 」より

吉川洋・井堀利宏両氏主導の主文と有識者コメントからなる。 第1部は逆進性を焦点に消費税と社会保障について。主文では「引退後も含めた生涯所得ベースで考えれば逆進性はそれほどではない」というが、ロスジェネを中心とする流動性制約のきつい(貯蓄がな…

共和主義・共同体主義の経済学・試論

コミュニタリアンに肩入れする理由などないのですが、「俺がコミュニタリアンだったらこう論じる」って感じかな。 以上のように考えるならば、我々は、共同体主義、ないしは共和主義の経済理論、政治経済学、というものの可能性についても考えることができよ…

増税論について

「増税論者にせよリフレ派にせよこの非常時にかこつけて平時以来の年来の自分に主張を更に押し込もうとする火事場泥棒だ」というお叱りを頂戴しておりますが。 「リフレ派」と目されている人の一部に現状を慨嘆するあまり「革命でもせなだめだ」と毒を吐いて…

たとえばアレントの言う意味での「政治」とは何か

について、アレントを直接には一顧だにせず、古典期ギリシア・ローマの一次資料に即して行われている木庭顕の仕事を参考にして考えてみるとどうなるか。 木庭によれば古典期ギリシアのポリス社会、そこでのデモクラシーと、共和政ローマは意外なほど近しい。…

なぜ私はローマ法にろくな素養もないのに突撃をかけようとしているのか

自分でもよくわかっているわけではないのだがたとえば(これはあくまでも一例でしかない、自分はホームレス問題について深刻な関心を持ってはいない)、ホームレスの公園「占拠」を巡る事件において、事実としてではなく権利としての「占有」の意義が下手をす…

『社会学入門』付録以来の宿題(続)

前回の続きです。相変わらずいい加減。 リチャード・ジェフリーのベイジアン意思決定論というのはThe Logic of Decision作者: Richard C. Jeffrey出版社/メーカー: University Of Chicago Press発売日: 1990/07/15メディア: ペーパーバック クリック: 12回こ…

『社会学入門』付録以来の宿題

前著の付録では社会学的全体論とクワイン=デイヴィドソンの意味・信念の全体論との対応付けと統合という課題が手付かずのまま放り出されていた。 その宿題を果たすべく書きなぐっているメモ。そのおかげでようやくベイジアンとかラムジー哲学とかも齧る覚悟…

佐々木中ネタ本続報

ルジャンドルについては 田口正樹「ピエール・ルジャンドルの「解釈者革命」について」 amazonの『法と革命』レビューより。

昨日の記事への補足

言わずもがなのことではあるが、自律型知能ロボットにとってなぜヒューマノイドであることが重要なのかといえば「自律型知能を持つためには身体を持った社会的存在であることが極めて重要らしい」からである。社会的存在でなければ合理的行為者にはなりえず…

自律型ロボット倫理の応用問題

以前「自律型ロボットの倫理学の基本格率」なるものを思いつき、その議論は『「資本」論』と『オタクの遺伝子』で少し敷衍したのだが、その後グレッグ・イーガンだの飛浩隆だのを読んだうえで更に考えたことを少しメモしておく。 浦沢直樹『PLUTO』は、最初…

リベラルな教育(続)

今日いわゆる「リベラリズム教育学」が言われるときに多く持ち出されるのは学校その他現場レベルでの教育方法の話ではなく、プロパーでいえば教育行政学というか、教育政策論の政治哲学的なお話であり、大概の場合はまさに「ロールズ産業」といいますか、社…

リベラルな教育?

「「リベラリズム教育学」というものは存在しえないのではないか」と以前研究会で話したことがある。 無償かつ強制的な公教育というものについて考える。リベラルな教育というものはこのような公教育を肯定し、なおかつその内容については統制を可能な限り廃…

産業社会論

いわゆる「新自由主義」のインパクトが強烈過ぎたため、そしてこれと関連して、「現存する社会主義」の経済体制が崩壊したため、我々はかつての――19世紀どころか20世紀の過半までの保守主義が、必ずしも経済的自由主義、市場重視の立場と親和的ではなかった…

日本のポストモダン教育学の原点?

森直人のエントリに補足。 ただ単にイリイチ流脱学校論のアカデミック教育学における受容のさきがけというにとどまらず、日本社会科学におけるポストモダニズム受容の、最初期における水準を示すと思われる、故森重雄の「批判的教育社会学」の問題意識は大略…

思いつき(続)

有徳な人格の陶冶とはすなわち規律訓練である。フーコーの統治性論と徳倫理学とはある意味ですんなりつながる。 政治的リベラリズムにおいて人格は超越論的対象であり、権力のターゲットは行為である。それに対して、古典的な意味での規律訓練権力はまさに人…

思いつき

・功利主義その他の厚生主義――為政者、立法者、テクノクラートの立場:一般市民は客体 ・カント的自由主義(権利論、契約論、含む一部の共和主義)――集団的自治の主体としての既に自立した市民の立場 ・徳倫理学的共同体主義――自立していない者たちを自立し…

石川健治「Workplaceと憲法」(『法律時報』2009年11月号座談会報告)

座談会25頁中丸々6頁(補足も入れると8頁強)を占めて座談会における話題提供というよりそれ自体で1本の論文になってます。何という俺様ぶり。 最高裁の「職業」論(「薬事法判決」「小売市場判決」) ・人格の発露 ・社会的機能分担 22条1項の「職業…

JILPT仕分けについて

http://d.hatena.ne.jp/roumuya/20100510 特に付け加えることはありません。 まあ若林亜紀が書いているようにいろいろ問題はあるだろうけど(話半分くらいに聞いたとしても不合理なことはいろいろある、ただJILPTの方でも若林にはいろいろ言いたいことはある…