論点

木庭顕の西洋中心主義

木庭顕が協力した朝日の記事に対して一部から「今更のヨーロッパ中心史観」「中世・イスラーム無視」とか頓珍漢な噴き上がりがあったようだ。後者については「紙面が限られていることを無視したないものねだり」ですませてもよいし、そもそもイスラームが古…

本日の講義(社会学史)をもとに

岸政彦・北田暁大・筒井淳也・稲葉振一郎『社会学はどこから来てどこへ行くのか』という本は日本の社会学の現状についてのよもやま話であり、「社会学は地味な学問なんだから地味にやろうよ」というメッセージを派手にやっているという変な本ですが、その背…

エドワード・ルトワックと木庭顕

『エドワード・ルトワックの戦略論』を読んでいて開巻早々に驚くべき記述に出くわす。 ここで私が展開する主張は、さまざまな逆説的命題や露骨な矛盾を抱えていても、戦略は必然的に妥当な考えを伴うということではない。むしろ、戦略の全領域が逆説的論理に…

20180624 日本18世紀学会大会共通論題報告への質問

プログラムはこちらだが当日配布資料あり。 佐藤淳二報告への質問 (『人間不平等起源論』でのルソーに「人間と動物を分かつものとしての完全を目指す能力」なるアイディアがあることに触れていた。)1.ルソーが「完成可能性」について考えており、それは…

『モダンのクールダウン』補遺、のようなもの

細かい解説は抜きです。 ========= 「イエスの福音が届かなかったとしたら?」という恐れにはどのような意味があるのだろうか? もちろんここで問題は「イエス」でなくてもよいのだが、それでもイエスにはある種の特権性がある。「普遍性を僭称する…

東京法哲学研究会例会(12月16日) 瀧川裕英『国家の哲学』合評会を承けて

国家の哲学: 政治的責務から地球共和国へ作者: 瀧川裕英出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2017/08/23メディア: 単行本この商品を含むブログ (4件) を見る 他のコメンターのお二人に比べて素人臭い外在的なコメントを、しかも不十分にしかできなかった…

アベノミクスについて今更の覚書

いうところのアベノミクスの基本的な正しさについて考えてみよう。正しいと考えない人は、どのような条件の下でそれが正しいのか、について考えるというところで妥協してみればとりあえずは同じことだ。そのあとでその条件が実際に満たされているかどうか、…

ヘイトスピーチと言論の自由につき思いつき

生煮えで恥を晒すところが多いがちょっと書いてみた。 == 応用哲学会のシンポで若い人たちが報告したヘイトスピーチの言語哲学的解剖はとても面白くて論文になるのが待たれるけど、帰りにちょっと大庭弘継君と話した通りいろいろ難しいところもある。 言語行…

宇宙における財産権と主権をめぐる雑想2

私法レベルでの財産権保障の枠組みが宇宙にストレートに延長されていくことを容認するとしても、それを支える公法的秩序、とりわけ国家主権、国際(公)法風に言うならば管轄権配分の問題は一筋縄ではいかない。 これまで「宇宙物体」といえば基本的に地上か…

宇宙における財産権と主権をめぐる雑想1

『宇宙倫理学入門』には書けなかったことを少し考えてみる。================ よく知られているようにアメリカ合衆国は2015年に商業宇宙打ち上げ競争力法を制定し、月や小惑星など地球外の天体・宇宙空間で発見した資源を、発見者が私的に自…

流れた研究会用のメモ

「新自由主義neoliberalism」という思考停止用語について 何でもかんでも憎らしいものに対してレッテルを貼っているだけではないか? ☆例えば―― バブル崩壊前の日本経済についての理念的モデルとしての「日本的経営」「日本型企業社会」と「産業政策」「護送…

「大屋雄裕『自由か、さもなくば幸福か?』(筑摩選書)刊行記念トークセッション」のためのメモver.3

当日配布したものはver.2です。こちらは初公開。 20140405大屋雄裕.pdf 統治と功利作者: 安藤馨出版社/メーカー: 勁草書房発売日: 2007/05/30メディア: 単行本購入: 2人 クリック: 55回この商品を含むブログ (80件) を見る功利主義ルネッサンス―統治の哲学と…

余剰モデルと消費貸借モデル再び

木庭顕がマルセル・モース、レヴィ=ストロース、そしておそらくはカール・ポランニーを意識しつつ交換echangeというとき、それはいわゆる「贈与交換」のことであるが、ここで大事なことは、この「贈与交換」が時間の流れの中で行われる非対称的な営みである…

柄谷行人新著を久々に手にして

柳田国男論作者: 柄谷行人出版社/メーカー: インスクリプト発売日: 2013/10/30メディア: 単行本この商品を含むブログ (11件) を見る 来年の柳田論の前に初期柄谷の柳田論が公刊。ぱらぱらめくって、やはり初期の柄谷はよい、と買ってしまう。 「序文」にちょ…

「9月22日『日本の起源』出版記念 中世化する日本?『平清盛』から『日本の起源』まで@ネイキッドロフト」へのフォロー

当日は入場料負けてもらったかわりに壇上でしゃべらされましたのですがそのフォローアップのメモです。================= 與那覇潤『中国化する日本』の構想の重要な着想源のひとつ(参照文献の中にはあげられていないにもかかわらず、原論文「中国化論序説…

許淑娟『領域権原論 領域支配の実効性と正当性』メモ

領域権原論―領域支配の実効性と正当性作者: 許淑娟出版社/メーカー: 東京大学出版会発売日: 2012/02/01メディア: 単行本 クリック: 6回この商品を含むブログを見る 目次 序 論 第1章 取得されるべき客体としての領域主権――様式論 第1節 様式論の特徴――ロー…

3月17日森建資先生退官記念講義「独立と従属の政治経済学」へのコメント(続)

(承前) やや繰り返しになるが、確認しておこう。古典的、あるいは共和主義的な「独立」とそれに基づく「自由」とは、財産権秩序の安定についてはその存立の前提としているが、市場経済についてはかならずしもそうではない。それはそもそも市場の外におかれ、…

3月17日森建資先生退官記念講義「独立と従属の政治経済学」へのコメント(続)

(承前) ここで今一度概念的な切り分けをしておこう。すなわち、もっとも単純な意味での財産権秩序と、市場経済と、資本主義をそれぞれ概念的に区別した上で関連付けてみよう。 単純な意味での財産権秩序、あるいは私有財産権制度とでもいおうか、この言葉…

3月17日森建資先生退官記念講義「独立と従属の政治経済学」へのコメント(続)

(承前) それにしても、共和主義と重商主義の親和性とは、どういうことか? それは必ずしも重商主義の国家主義(エタティズム)的側面に止目しなくとも言えるし、言わねばならないことである。共和主義的な「独立」「自由」の基盤となる財産は市場的取引か…

3月17日森建資先生退官記念講義「独立と従属の政治経済学」へのコメント(続)

(承前) 他方で森は一人一人の生身の人間、とりわけ小農や労働者、というミクロな単位においてのみならず、マクロな「国民経済」という単位においても「独立と従属」について考えようとした。レオポルド・エイメリーへの着目(「エイメリーとイギリス帝国主…

3月17日森建資先生退官記念講義「独立と従属の政治経済学」へのコメント

疲れた。とりあえず途中までアップする。内容的に実は建築学会シンポへのコメント、更に去年の講義ノートだの立岩『私的所有論』批判などとも関連している。雇用関係の生成―イギリス労働政策史序説作者: 森建資出版社/メーカー: 木鐸社発売日: 1988メディア:…

日本建築学会復旧復興支援部会シンポジウム「復興の原理としての法、そして建築」(3月23日)感想

以下は当日の模様のレポートではなく、あくまでも私的な感想である。公的なレポートは、来る『法学セミナー』をご覧いただきたい。なお、以下では触れていないが、モデレーターの木村草太による資料はきわめて充実しており、一見の価値がある。いずれ配信さ…

ベーシックインカムとベーシックキャピタル――と金融屋

資本主義が嫌いな人のための経済学作者: ジョセフ・ヒース,栗原百代出版社/メーカー: エヌティティ出版発売日: 2012/02/09メディア: 単行本購入: 20人 クリック: 834回この商品を含むブログ (16件) を見るを読んでいて著者ヒースが「ベーシックキャピタルよ…

トークイベント「SFは僕たちの社会の見方にどう影響しただろうか?」感想

既に読まれた方には言うまでもないことだが、伊藤計劃の第二長編『ハーモニー』は第一長編『虐殺器官』の後日談として読むことができる。後者の末尾で暗示されていた大災厄を踏まえて、前者における超福祉管理社会が到来しているのである。 『虐殺器官』の結…

トークイベント「SFは僕たちの社会の見方にどう影響しただろうか?」用メモ

昨日24日の「現代経済思想研究会・特別セミナー 稲葉振一郎・田中秀臣・山形浩生・トークイベント「SFは僕たちの社会の見方にどう影響しただろうか?」」は盛会のうちに無事終了いたしました。お越しくださった皆様、ありがとうございました。 当日のレポはt…

立岩真也『私的所有論』の一解釈

念のためにここから今少し敷衍しよう。まさに不動産からの「立ち退き」のケースについて考えてみる。再開発の波が押し寄せる小汚い下町で、猫の額ほどの土地の上にボロ家が建っている。しかしその土地はまさにその居住者のものだとしよう。あるいは借り物だ…

市民社会から資本主義へ(続「「占有」について」)

かつての日本の市民社会派マルクス主義は、市民社会から資本主義社会への転化を「領有法則の転回」――「労働に基づく所有」から、「蓄積された労働=資本に基づく所有」への転化として捉えた。それは言ってみれば「小ブルジョワ没落史観」である。『資本論』…

「占有」について

いい加減なノート。やっと立岩理論の意義と限界が見えてきた感あり。============================ 昨今の「市民社会」ブームの中ではほとんど忘れ去られていた、戦後日本マルクス主義の一ウィングとしての「市民社会派」はマル…

「労使関係論」とは何だったのか(19)

圷君たちの本を受け取ってちょっとまたまたむずむずしてきたので社会政策論と福祉国家論につきまとめてみる。精密な学説史的考証は後からやればいい。 まあ「社会政策学の復興」は武川正吾先生のやり方ではだめで、かといって圷さんたちのやり方でもダメで、…

教育の存在論(嘘)についての思い付き

教育社会学・教育経済学の学校教育についての理論、その存在論的前提について考えてみよう。 人的資本論はリベラリズム本流のそれと一致する。人間は本性レベルにおいては皆同じであり(かつその本性は不変であり)、違いは後天的に付加されるものである。教…