野村正實の研究の周辺 2008年4月19日

http://www.econ.tohoku.ac.jp/~nomura/periphery.htm

 別に統計を取ったわけではないので正確さは保証しがたいが、実感として、社会科学研究者が自分の単独著書を出版する年齢は、40代前半がもっとも多いと思われる。普通、最初の著書は、指導教員や先輩研究者などの強い影響を受けている。研究者個人の本当の個性が発揮されるのは、第二作目以降である。ところが40代で最初の著作を発表した多くの研究者は、ほぼその時点で力を出し尽くしてしまったかのように、それ以後、モノグラフを書く気力を失い、単発論文を発表するだけに終わってしまう。そういう場合、単独著作の第二作は、いろいろな雑誌に発表した論文の寄せ集め論文集になる。そこでほぼ、研究者としての活動を止める。
 私は、一生を通じて見た場合の研究者の生産性は、最初の本を出版する年齢に強く相関しているのではないか、と思っている。才能があっても最初の仕事をまとめるのが遅れてしまった場合、その才能を十分に生かしきる前に研究者としての気力が衰えていってしまう。逆に、これといった才能がなくても、早めに最初の仕事をまとめ、引き続き自分の関心に沿った研究を進めていくことによって、研究への意欲を持続し、それなりに研究成果を出し続ける。私の場合は、明らかに後者である。今日まで私が研究者としてやってこれたのは、人的つながり、めぐまれた研究環境に加えて、とにかく30代前半で最初の仕事を取りまとめたことにある、と思っている。私は、若い研究者に、30代前半で最初の仕事をまとめよ、どんなに遅くても40になる前に最初の仕事をまとめよ、と声を大にしていいたい。

 この日なお紹介されている著作は

現代ドイツ企業の管理層職員の形成と変容

現代ドイツ企業の管理層職員の形成と変容