『論座』6月号、広田照幸論文

http://d.hatena.ne.jp/merubook/20060502/p2
 山形先生のお怒り(http://cruel.org/other/rumors.html#item2006050101)に触れたアレですがな。私は実はまだ読んでいませんが、広田先生の危機意識はある程度共有しておりますし、かといって山形先生のおっしゃることもわからんではありません。
 人文系のみならず全般的に研究者・高等教育担当者の労働市場に恐ろしいミスマッチが生じており、それは当然に労働市場限定の問題ではなく、学術研究の社会的需給バランス全般にかかわる問題なのでしょう。後進を育成し、しかるべき処遇を与えて研究を次世代へと継承発展させていくためには、目先の資金獲得に汲々とするだけではだめで、やはり遠回りに見えても、地道に学術研究の社会的意義を広く世間に知らしめ、スポンサーを増やしていくしかありません。それがだめなら、世間が許す範囲にまで規模を縮小していくしかない。
 学術研究はかつての公益事業の多くと同様、いまや成熟産業であり民営化すべきものなのか、そうではなく強い外部性が働く公共財であり、公的に支えられるべきなのか。仮に外部性が強いとしても、著作権特許権等の知的財産権強化を中心とした内部化路線で充分対応できるから、やはり市場化して構わないのか。このあたり冷静に考えてみないといけません。(という風に考えてみること自体が、立派に学術研究になるんだから、やはり学問というのは何だかんだいって有利なポジションですよ。)