お勉強と社交

 土日は吉原直毅に誘われて、鈴村興太郎大先生代表の科研費特定研究『地球温暖化問題を巡る世代間衡平性と負担原則』の総括カンファレンス(@学術総合センター)にディスカッサントとして参加。おお、なんだかまるで学者みたいだぞおれ。
 面子は厚生経済学者と法哲学者ばっかりで、論じられるテーマも唯一の例外を除いてあらかた世代間衡平についての形式的・規範理論的な考察ばっかり。唯一の例外は実験経済学(「制度設計工学」だってカコイイ!)の大御所西條辰義らの、排出権取引についての実験。西條先生は具体的な地球環境問題についての、地球科学の具体的な知見をふまえた研究がないことを嘆き、大仕掛けのモデルを駆使した報告をする吉原氏にしきりに突っ込みといやみを入れていた。せんせそらおっしゃるとおりやけど、このプロジェクト5年やっとりますのやろ。今ごろ言うても詮無いことですがな。
 研究会の影の主役はロールズはもちろんだがそれ以上にパーフィットであった。『理由と人格』第4部の「非同一性問題」(現在世代の選択aの結果生まれるであろう将来世代Aと、代替的な選択bの結果生まれるであろうBとは、まったく別の存在である。それゆえ、ここでたとえばAの生活水準の方がBのそれより高かったとしても、Bはその責任を問うて現在世代に文句をつけることができない。なぜならもし現在世代がaを選択していたら、そもそもBは存在さえしていないはずだからである。)は、やはり世代間倫理に突きつけられた大きな挑戦である、ということらしい。
 一橋卒業後20年近くを経て初めて塩野谷祐一大先生の知遇を得る。意外な展開。でも鈴村先生にはご挨拶しなかった。やはり具体的な手土産なしにご挨拶は図々しい。(塩野谷先生にはすでに『教養』を謹呈したのだ。)
 その他、森村進とひさびさに再会、長谷川晃、宇佐美誠、後藤玲子、須賀晃一といった方々と初対面。須賀氏、吉原氏に、ちくま新書の拙著の話をする。Sakakibara&Suga(2004)の自然状態モデルの拡張が可能なのではないか、等々議論となる。
 できれば須賀氏か吉原氏と一緒に、自然状態と社会契約のformal modelの共同論文を書きたいのだが――どなたかこの辺に関心のある若い厚生経済学者かゲーム理論家はおられませんか?