id:okemosさんによるとコロンビア大の計量政治学者アンドリュー・ゲルマンのセミナーでイースタリーがしゃべるというので行ってきたよ。生イースタリーは意外と老けてました。
内容自体は基本的に前著White Man's Burdenでも提示された援助におけるボトムアップアプローチの紹介だったけど、伝統的なトップダウンアプローチの話をする際に、ミュルダール、ローゼンシュタイン=ローダン、ルイスと開発経済学の英雄時代の人々の名前がたくさん出てきて、どれもこれもこき下ろされてたのが面白かったよ。古典的リベラリズムの英雄ジョン・ステュアート・ミルも「残念ながら貧者には自由を認めなかった」トップダウンな人の仲間入りだよ!
さらに興味深いのは、この英雄時代(おおむね1950年代)にも黙殺され忘れ去られた先駆的なトップダウンアプローチ批判者がいたということ。紹介された名前は「小農は貧しいが効率的にやっている」と主張した人類学者Sol Tax、オックスフォードの開発経済学者S. Herbert Frankel、それからP. T. Bauer。どれも知らない。
またコリアー著の書評(これは必読)では統計分析の落とし穴(「相関と因果の混同」と「セレクション・バイアス」)について力説していたが、これは開発研究全般にまとわりつくやっかいものだとのこと。人はどうしてもサクセスストーリーばかりが記憶に残ってしまう認知的歪みによって判断を狂わされるが、開発経済学でも同じ。(これ経営学でもまんま言えるよね。)
・「「東アジアの奇跡」以来の「韓国に倣え」アプローチはどこでもうまくいかなかった――その後の当の韓国においてさえ!」
・「「貧困の罠」ってセレクション・バイアスにすぎないんじゃね? 反例なんかいくらでも見つかるし。」
ところでひどいオヤジギャグがパワーポイント付きで炸裂した。
「なぜトップダウンの方がボトムアップより目立つかって?
ボトムアップのアイコンはフリードリヒ・フォン・ハイエクFriedlich von Hayekで、
トップダウンのアイコンはサルマ・ハエックSalma Hayekだからさ!」
このギャグは経済学者の間ではやってるの?
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