基本に立ち返り

 不況について今さらのメモ。間違ってたらご教示ください。

1929年大恐慌に続く長期不況について。

 かつての論争構図;
・古典的ケインジアン(旧テーミン含む)
 20年代における株式市場バブルとその崩壊が大恐慌であり、長期不況はその負の遺産としての過剰生産力によるものだった。(ことにマルクス主義者によれば)ニューディールはこの過剰生産力を財政金融的な拡張政策で吸収しようとしたが不十分で、アメリカ経済の完全な回復は大戦なくしてはあり得なかった。
マネタリストフリードマン=シュウォーツ)
 長期不況の主因は金融政策の失敗、つまりは銀行破たんおよびそれへの適切な対処の欠如と、何よりも不適切なマクロ金融政策、マネーサプライの不足による。株式バブル崩壊後も金融システムならびに金融政策が適切に行われていれば、長期不況はなかった。(ニューディールについての評価は?)
・ポスト・(新)テーミン(『大恐慌の教訓』以降)
 長期不況の主因は金融政策の失敗を含めて、金本位制的政策レジームが適切な政策対応を不可能にしていたことにある。個々の政策転換ではなく政策レジームそのものの転換、それを受けての民間主体の期待パターンの変化が、長期不況を終わらせた。その限りでニューディールは十分に効果があった。
☆現時点では新テーミンが通説、ということでよろしいのでしょうか。

現今の世界同時不況について

サブプライム、ならびにそこに仕込まれていた金融商品の暴走がきっかけではあるが、より根本的には2001年のITバブル崩壊を受けてのグリーンスパンの緩和政策が住宅バブルを引き起こしたということが、今回の金融崩落のあえて言えば主因と見なされる。
――という見方がよく開陳されるが、妥当なのか。また仮に妥当だとしても、どのような予防策(プルーデンス政策)が考えられるか。
・仮に住宅バブルが大問題だとしても、現局面で重要であるのはあくまでも短期的な危機克服だとしたら、何が大事なのか。やはり財政出動・金融緩和プラス、何らかの政策レジーム転換ではないのか。
 一部の左翼の中に「今こそセーフティーネットを」という声も散見されるが、それは好意的に見れば政策レジーム転換への期待ともとれる。もちろんセーフティーネット自体はプルーデンス政策同様長期的・ミクロ的なものであって危機対応には直接は役に立たないと思われるが、政策レジームと解釈するならば、むげに拒絶すべき論点でもないかもしれない。
金本位制どころか固定相場制自体が廃されて久しく、景気変動の遮断効果が大きいはずだった変動通貨制のもとでも結構不況が国際的に波及している主因は。クルーグマンの「国際金融乗数」モデルは妥当か。

一般的に、不況というものへの態度について

・不況は基本的にはバブル崩壊後の「羹(あつもの)に懲りて膾(なます)を吹く」だと考えてよいのか。仮にそうだとして、バブル対策としては予防策をこそ重視し、それを防ぐためのプルーデンス政策は「バブル根絶(情報生産を伴わない単なる投機的取引の全面禁止)」までいくべきなのか、それとも不況対策として重要なのは事後処理・危機管理であり、防止策はほどほどがよいのか。
・「政策レジーム転換」って「短期的危機脱出のための、長期的な期待枠組の転換」じゃね?


大恐慌の教訓

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脱デフレの歴史分析―「政策レジーム」転換でたどる近代日本

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