東島誠『公共圏の歴史的創造 江湖の思想へ』(東京大学出版会)

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 積読解消。

 「江湖」とは不在の概念であった。しかし不在であるがゆえに理念化され、その構築の必要性が根源的に意識されたという点において、それは、西欧世界における《公共圏》、すなわち《未完のモデルネ》の問題構制に著しく接近するものと言わねばならない。(中略)
 ただここで一点重要なことは、「江湖」を現代において問おうとする場合、西欧における《ギリシャ的公共圏》のように、かつてあった記憶として提出することができない点である。ここで「江湖」が、そもそも中世においてすら不在のものとして認識されていたことが、見失われてはならないのである。従って中世に《江湖の思想》を探求することは、丸山真男のように、日本の前近代に近代的思惟様式を〈発見〉する姿勢とは、はっきりと一線を画している。それはまさに、現代における歴史的創造の営みなのである。(311頁)