岡本裕一朗『ポストモダンの思想的根拠 9・11と管理社会』(ナカニシヤ出版)

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 やや突っ込み不足だが便利な本ではないでしょうか。
 レッシグなどと同様、現下のポストモダンの管理社会の問題を「人が自発的に管理を欲する」というところに求め、この問題を回避して「帝国」対「マルチチュード」の二元論に居直るのがネグリ=ハートのダメなところだとの指摘はそのとおりだが、「人が管理されることを欲するのはなぜか」というテーマは著者も認めるとおりフーコードゥルーズにとっても基本問題であったはず。しかしその構図自体はフーコーの描いたモダンな規律社会にも共通していたはずで、とするとモダンとポストモダンの違いをどこに求めるかというテーマが浮上する。ここら辺でまだ著者の思考は十分練れていないのではないか。「動物(化)」というキーワードをマジックワードにしてしまわないためには、まだまだやることがある。
 とはいえ大雑把な見取り図を平易に描くという趣旨は成功していると思います。新書だったらもっとよかったかな。