梶ピエール『ポル・ポト』評

ポル・ポト―ある悪夢の歴史

ポル・ポト―ある悪夢の歴史

著者のフィリップ・ショートはクメール・ルージュ政権下のカンボジアで起こったことは「ジェノサイドではない」という立場をとっている。では、「あの悪夢」は一体なんだったのか。ショートは明確な答えを出すのを慎重に避けているけど、誤解を恐れず言ってしまえば、僕のイメージに浦沢直樹の『MONSTER』で描かれたような、どこかの平和な田舎町が憎悪と殺戮の連鎖に巻き込まれていく恐怖に一番近いように思う。もちろん、『MONSTER』との一番の違いは、おぞましい悲劇を引き起こしたのがヨハンのような特別な存在=モンスターではなく、徹底して「凡庸な理想主義者たち」であったという点だ。

http://d.hatena.ne.jp/kaikaji/20080205/p1