『KINO VOL.02 思考としての『ガンダム』』

 拙文「亡霊の戦場」は『オタクの遺伝子』からの流用だからまあよいとして、富野監督の学生への講演がなかなかよろしい。

 テレビの仕事に関していいますと、僕の場合は――やっちゃいけませんよ――全部書き直します。他人の筆は入れさせません。要するに、下敷きに使うだけです。(中略)
 その上で――わかりやすくするためにひどい言い方をします――無能なシナリオライターと一緒に仕事をやるくらいだったら、ひとりでやった方がいいじゃないか、という考え方が僕にもあるようですが、それはまったく嘘です。無能であろうがなかろうが、シナリオライターを志望していたり文筆業をやろうとしているスタッフをひとりでも3人でも5人でも入れるし、最後にその人のホンを全却下するかもしれないけれど、絶対に必要なスタッフなのです。
 どうしてかというと、「おまえはひとりでそれほど天才か?」という話です。そして全部却下するホンにしてもです、それがあるから考えたというネクストがあるんです。だからスタジオワークに参加してくれるスタッフは絶対に必要です。(中略)
 ですから、今僕が言った「無能なスタッフ」という言い方は、本当にこれはレトリックです。スタッフとして参加してもらう人はいなければいけません。その人の仕事を全否定するような仕事であっても、こちらを向いてやってくれるスタッフがいるからこそ、否定し得る。ですから、大切なスタッフになります。(123頁)


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