吉田秋生『海街Diary3 陽のあたる坂道』(小学館)

海街diary 3 陽のあたる坂道 (フラワーコミックス)

海街diary 3 陽のあたる坂道 (フラワーコミックス)

 同世代のまんが読みはみんな読んでるっぽいこのシリーズ、たしかに著者の円熟の境地を示す傑作となりそうな予感がする。ものすごく繊細でかつ広がりのある世界が描かれている。やがては陰のヒロインたるアライさんも、『よつばと!』のヤンダのように何の気なしに登場してくるはず。
 思えば『BANANA FISH』連作って、道具立てばかりでかくても、ものすごい狭い世界だったよな……。宇野常寛君は『BANANA FISH』連作の吉田を「転向」と捉えていたけど、その伝で行けば『海街』で彼女は回帰ないし再転向したということになるけど、実際どうしてあのシリーズを書いたんだろう。


 あと最近「藤田和日郎のどこが間違っているのか」が気になっています。せめてサンデーから解放されて、青年誌に移行すればもう少し何とかなるのかなあ。

立ち読み

 ああああ……。
 意外とちゃんとしている。『ドラゴン桜』なんかよりはリアリティがあるので、高校で教材に使うといいかもしれない。
 ただ、見かけほど新機軸というわけでもない。
 そもそも『ドラゴン桜』にしても、反響を見てあのようなベタベタのノウハウまんがに軌道修正したわけで、本来ならばもっときちんとしたドラマ仕立てで展開されるはずだったことは、前作にして原型である『クロカン』などをみれば大体予想がつく。
 そしてそもそも当の『クロカン』にしてから、あるいは『おおきく振りかぶって』にせよ『おれはキャプテン』にせよ、現代野球まんがにはマネジメントや人材育成の問題がサブテーマとして絡んでくることがほとんどである。「スポーツまんがに学ぶマネジメント」といった特集記事はこれまでにも何度か雑誌に載ったこともある。
 本書の目新しさはとりあえずは、正式に原テキストとタイアップした、というところにあるわけだ。