哲学の位置について私見

「人の生きづらさについて社会学はそれを生み出す社会体制・環境のメカニズムを明らかにし、その変革を通じて何とかしようとするし、心理学は個人の心身にはたらきかけて何とかしようとするけど哲学はどうなのか?」と問われて「臨床哲学とか応用倫理学だとあまり変わらないけど、本来の意味での哲学ならどうかというと、実は社会学も心理学も暗黙の裡に、社会体制・環境にせよ個人の心身にせよ変わりうるもの、変えることができるものと考えていて、そこに介入して変えることもできるしまた変えないこともできると考えている。というよりその前提を外すと成り立たない。しかし哲学の場合「変えようがない・どうしようもない・どうにもならない」という可能性にまで広げて考えることができる。実証科学とそれを前提とした技術論・政策論にはそれは禁じられている。」と答えてみた。
哲学だと決定論や運命論も考えてよいけど、科学では実はだめだ(実験もできなくなる)、という風に理解していただいてもよいかと。
ではそういう哲学が世の中的に実証科学と違う受け止められ方をするかというと、実のところ応用倫理学では実証科学と変わらずに実践的指針を出しちゃうし、仮に決定論や運命論の立場から何か言っても、それもまたある種「セラピー」として受容されてしまって、普通の臨床哲学とか自己啓発と結果的には変わらないのだと思う。
ではそこに違いがないかと言えば決してそんなことはないのだが、世俗的にはないも同然なのではないか。