論点

「労使関係論」とは何だったか(4)

文献全部日本においてきた状況で記憶だけを頼りに書くには無理があることなど百も承知。まあいい加減あきらめて大原社研雑誌のサーベイシリーズを読みますよ。 - 政策論的、あえて言えば政治学的かつ知識社会学的な段階論解釈に理があるとは言っても、あくま…

「労使関係論」とは何だったのか(3)

段階論のベンチマークとしては大別して上部構造的な「政策」「法制」「イデオロギー」と、下部構造的な「生産力」「産業組織」との二通りが考えられる。そして両者の予定調和は必ずしも保障されていない。結論から先に言えば、後者の契機に着目したうえで、…

「労使関係論」とは何だったか(2)

「段階論」 宇野弘蔵の独自のマルクス経済学体系において、労働問題研究に対して、のみならず日本の社会科学全般に対して最も影響力が大きかったのはその「段階論」の部分である。段階論自体は宇野理論の独創ではもちろんなく、20世紀マルクス経済学そのもの…

労使関係論とは何だったか

hamachan先生の 本来労働問題というのはどぶ板の学問である労使関係論が中心であって、それに法律面から補完する労働法学、経済面から補完する労働経済学が、太刀持ちと露払いのごとく控えるというのが本来の姿。 これはちょうど、国際問題というのもどぶ板…

アセモグルー「2008年の危機」抜書き

久松さんの向こうを張って、というわけでもないが重複しないように。 Sure enough institutions have received more attention over the past 15 years or so than before, but the thinking was that we had to study the role of institutions to understa…

Daron Acemoglu, Political Economy of Growth (その2)

http://econ-www.mit.edu/files/1354 のテキスト部翻訳続きです。引き続きグラフと表は原スライドを見てください。今回も二段階最小自乗法です。次回はモデル分析が入ってきて、素人向きじゃなくなってますがご了承ください。

Daron Acemoglu, Political Economy of Growth (その1)

http://econ-www.mit.edu/files/1354 どなたでも計量経済学の素養のある方、突っ込みをお願いします。

Daron Acemoglu, Human Capital and the Nature of Technological Progress (その2・完)

後半です。引き続きこちらと一緒にご覧ください。文献リストがないのがこのスライドの欠点ですが、調査はまた今度。

Daron Acemoglu, Human Capital and the Nature of Technological Progress (その1)

パンピー向けの書き物が少ないアセモグルーですが、こちらで公開されている公開講義用スライドの文章のみ、ざっと翻訳してみました。Typoも気付いた限りで直しました。 ここまでは前振り、といった感じで、「方向づけられた技術進歩」や「制度」についてのア…

構造的失業率の推計について

これが信用できないと岩本康志先生の財政政策慎重論は成り立たないので、おさらい。 日本での構造的失業率の過大推定疑惑については岡田靖さんのこの論説(webarchiveからのサルベージ。きちんとダウンロードしないと読めないかも)あたりがはしりか。 その…

基本に立ち返り

不況について今さらのメモ。間違ってたらご教示ください。 1929年大恐慌に続く長期不況について。 かつての論争構図; ・古典的ケインジアン(旧テーミン含む) 20年代における株式市場バブルとその崩壊が大恐慌であり、長期不況はその負の遺産としての過剰…

ホモ・サケルとアハト刑

笹倉秀夫『法思想史講義』を読んでいて気になったのだが、アガンベンはたしか「ホモ・サケル」の話をする時にアハト刑の話はしていなかったと思う――のですが、何かこの辺についてご存じの方はおられる? まあアハト刑はゲルマン法上の制度だけど。 http://ja…

クェンティン・スキナー公開講義 "A Genealogy of Liberty"

昨夜(当地で18日)コロンビア大学まで足を延ばしてご尊顔を拝してきた。意外に若々しい。今年はこのテーマであちこち講演をして回っているようなので、近くまとまるのだろうか。 スキナーというと、政治理論から区別された「歴史科学としての政治思想史」の…

ここで素人臭い質問をして識者の教えを乞う

というわけで。 そもそも「サブプライムローン」ってそんなにけしからん仕組みだったの? やっちゃいけないことだったの? 危ういっていえば危ういだろうけど、そのおかげで家を持てた人もいたんじゃないの? 今回たまたま、それが金融危機の引き金になった…

アメリカの「構造問題」

昨夜はSDS(Students for Democratic Society、まあ左翼の大学生の集まりですな)主催の、ニュースクールの経済学者ダンカン・フォーリーの講演に行ってきた。フォーリーもSDSのOBで、公共経済学で古典的な業績を挙げて以降数理マルクス経済学や経済思想史に…

何か誤解があるような、しかしそれにしても案外世論は動いているのかも

あちこちのblogで「議会が馬鹿」だとか「国民の経済理解不足」なんて書かれてるけどさ。そもそも国民が充分に利口ならあんな詐欺まがいのサブプライムローンなんか借りないでしょ? それを使ってさんざん儲けておいて損したら泣きつく人たちを救済する法案が …

oさんのコメントより(続々々々)

http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20080918/p1 より引き続き。 復習すると、もともとの問題がどこにあったかといえば、mojimoji氏の論点がGDPを「社会指標」とみなすことへの異議にあったとすれば(要検討)、おそらく山形氏はGDPを普通の意味での「社…

oさんのコメントより(続々々)

いよいよ「パイプのけむり」化してきたよ! http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20080917/p1 であたかも、「消費可能財集合」とか「所得分配プロフィール」とかの(帰結主義的な意味での)社会の状態は多次元的でそれこそアローの定理に罠にかかりかねな…

oさんのコメントより(続々)

http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20080916/p3 での結論を再確認する。 議論にどのような混乱があったのか? 「現状が不完全雇用であるならば、まずはそれを解消したうえで、それから――というよりもそれと並行して再分配をしようよ。たぶん失業の解消…

oさんのコメントより(続)

ネット上ではみんな飽きっぽいよね。それはともかく http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20080909/p1 の続きということで、改めて「仮説的補償原理」について勉強してみたよ。 非常におおざっぱにいえば、こういう状況が想定されていると考えるよ。 ・ま…

ネオマルクス主義世界経済論についての思い出(2)

「世界システム論」という大風呂敷が「社会学においても「国際関係」「世界」を論じていいのだ!」という「コロンブスの卵」的な問題意識の転換をもたらしたことの意義とか、更には歴史学とか国際政治学とかに対して与えた効用(「国家」という単位の相対化…

ネオマルクス主義世界経済論についての思い出(1)

まあ要するに「従属理論」とか「世界システム論」のことだと思ってくださって結構。 『教養』ではこの辺をほぼカットして、どちらかというとオーソドックスな守旧派、つまりは「世界資本主義」としてではなく、「一国資本主義」の集まりとして世界経済――とい…

oさんのコメントより

盛りだくさんだったので、 http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20080907#c1220772704 から適当に編集します。 *「GDPを増大してパイを拡大すれば、その後に何らかの再分配策によって、全員の状態を改善できる、つまりパレート改善できる」? →できない…

終了してない(4)

新学期が始まり報告の日程も決まり〆切も設定されて英作文に戻ったから当方もヲチ態勢に移行……というのは無責任にすぎるか。 ミクロがご専門のtazuma氏の感想; もしもすでに経済がフロンティアの上にあって、成長と平等がトレードオフの関係になっていれば…

終了してない(3)

ここで問題としたいのは「そもそもGDPとは社会的選択の対象となるようなものか?」ということです。そもそもGDPはいったい何の指標であるのか? が大変気になっております。 ミクロ的な見方を徹底すれば、GDPとは結局、社会的選択の対象、評価と選択の対象と…

終了してない(2)

承前http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20080904/p2 それでは「こうした社会的選択理論の使いどころはどこであり、その前提は何か」について少し考えさせてください。 ここで社会的選択理論が考える、社会的な状態、更にはその基礎になっていると思しき…

終了してない(1)

http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20080904/p1 論争はディベートにはならずに無秩序に広がりながらそれぞれに論点を深めたり増やしたりしていけばいいと思います。 まず、mojimoji氏も肯定的に触れている拙ブログへのoさんのコメントに従って、もう一度mojimo…

終了

http://cruel.org/other/gdp.html http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20080903/p1 終了。つまんないと言えばつまんないけど、変に盛り上げて馬鹿にエサをやらないという意味ではよいかもしれません。 反省と気になったことを少し。 mojimoji氏へ。「論点ずらし…

GDPをめぐる論争(がこれから始まるのかもしれない)について

http://cruel.org/other/gdp.html http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20080901/p1 このままいけばぼくの疑問への答えも間接的に出てくるはずなのでここでぼくも矢野さんに倣って「俗事は任せる」、いや火の粉をこっちに飛ばさないでねと高みの見物を決め込みた…

最近は経済学を勉強していないんだってば

http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20080829/p1 こちらの前段の「GDPの社会指標としての限界」問題についてはとりあえずおいておきます。(古い話だが大事な話で何度か蒸し返されるものではあるし、現時点では異論というほどのものはないです。) 引っかかった…