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 そもそも憲法でいうところの交戦権とか、憲法学の文脈での自衛(権)と国際法上の「自衛権」との関係自体がまったく自明ではない。
 本書は19世紀にさかのぼって「治安措置型自衛権」という極めて奇妙な概念を掘り起こし、それを今日なじみ深い(ということになっている)防衛戦争型自衛権と対比する。自国にとっての脅威となりうる行動が自国の領域外、管轄権外でなされているにもかかわらず、管轄権のある国家がそれを取り締まらない場合に、自国の利害、安全を守るために、あえて自国の領域外で武力行使をする。その権利が「自衛権」として語られたのである。つまりそれは管轄権を行使しない(できない?)国家自体に戦争を仕掛けるものではない。これは20世紀以降の戦争違法化論の中で形成されてきた、違法行為としての侵略戦争に対する反撃を念頭に置いたいわば「防衛戦争型自衛権」とは、極めて異なったものである。「治安措置型自衛権」は武力行使の権利ではあっても戦争の権利ではない。
 今日の集団的自衛権と個別的自衛権をめぐる論争はもっぱら後者の土俵上のものであるが、では前者に今日まったく意味がないかというと、むしろ破綻国家が問題となる今日、非常にアクチュアルなものとして浮上しつつあるようだ。