村上春樹『1Q84』(新潮社)

1Q84 BOOK 1

1Q84 BOOK 1

1Q84 BOOK 2

1Q84 BOOK 2

 ほとんど通俗エンターテインメント並みに読みやすい。一気に読ませる力とか技術とかには文句のつけようがないのだが……。
 結局『羊をめぐる冒険』から一貫して同じテーマを追究しているのね。そしてどんどんわかりやすくなっているのだが、深化している感じがしない。むしろ、わかりやすくなることによって、かえって失われてきたものもあるような……あるいは、もともと実はそこに大したものがなかったことが明らかになってきているのか。一読しただけではまだわからない。
 ところでこれの続きが出る、なんてことはないでしょうね。描きようがないものをあえて書こうとせずに、ここで止めておく、のがきれいなんでしょうけど。でもどっちかというと続きを書いて大失敗する方がはるかに面白くなるような気がする。『ねじまき鳥』よりもっと。