「成長と不平等・再分配のマクロ経済学」関連

 世界レベルで目立つスター研究者として


 90年代にシュムペーター的内生的成長論で注目されたフィリップ・アギオン
http://www.economics.harvard.edu/faculty/aghion
 マクロ数理政治学トップランナーでもあるらしい、クラークメダルをとったダロン・アセモグル
http://econ-www.mit.edu/faculty/acemoglu/
 数理政治学行動経済学にも手を出しているっぽいロラン・ベナブー
http://www.princeton.edu/~rbenabou/


あたりをベンチマークとして、彼らが啓蒙的な文書やサーベイ論文を書いていればチェックしていくといいと思う。(クルーグマンみたいな筆達者はいないようだが、アギオンなら先の欧州開銀のものやJPEの共著論文、アセモグルならニュージーランド財務省ペーパーや講演用パワポ、ベナブーならHandbook寄稿論文、でなんとかしよう。)ここから共著者などを芋づる式に手繰っていけばかなりの量の仕事が出てくるはずだ。
(なおアセモグルの若い時の論文に、多くの場合「定型化された事実」としてカッコにくくられている「人的資本の外部効果」の発生メカニズムそのものを解明しようとした野心的な作品があった。)
 基本線としてはたぶん、現今の不平等の主因を人的資本格差に求め、かつ、資本市場の不完全と人的資本の外部効果の存在の下で、再分配によって平等化と成長を同時に実現する可能性を追求する――という感じか? 
 これだと「貧困者は富者に搾取されているから貧しい(もちろんマルクス=ローマー的な意味で「搾取」はされているだろうが)」のではなく、「貧困者の富者の人的資本へのただ乗りが成長を抑制している」といったニュアンスだな。いずれにせよ「なぜ貧しいのか、誰が悪いのか」ではなく、「「貧すれば鈍する・損する」のは貧困者だけではない、この悪循環を断て」という発想だ。


 で、私が何をしてるかって? 
 内生的成長論の「きほんのき」ということで、オイラーラグランジュ方程式をいじったあとは古典のLucas88年論文をノートを取りながら読んでますよ。ええ、ちゃんと式の導出過程を自分で追ってます。計算だけで証明とかのない、比較的簡単な部類の論文なんだろうけど、それでもしんどいのなんの。そういう簡単な計算――もろくに追えないくらいこちとらなまってるのだが、大事なのは数字と記号に溺れず「何のためにこの計算をしてるのか」を常に頭に浮かべながら読むことなのね。
 お勉強ではなくアウトプットの方は、On "Benevolent Totalitarianism"が1万2千語強と長すぎて、ちょっといじったくらいじゃ大概のジャーナルに長さのせいで門前払いとなりそうなので、対応を検討中です。「長いのもオッケー」のところに出すか、素直に二分割か。火曜日のセミナーの反応もみなければ。英語圏に出す価値はあるのか。
 あとは某社から出す予定の社会学入門教科書(以前話題にしたオールスター共著ではなく、単著)に追われてます。夏休みに集中してがーっと半分(「社会学の外堀」)は書いたんだが。このあとがわしの苦手な「社会学の本丸」です。
 というわけでこの間入れるのは経済学、出すのは政治哲学と社会学、という感じ。すごく変。本当は逆のこともしたいけど、たぶんそんな日は永久に来ない。