- 作者: 安藤馨
- 出版社/メーカー: 勁草書房
- 発売日: 2007/05/30
- メディア: 単行本
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一昨日12日のことですが今日書きます。
といっても細部を覚えていませんが。
結論的にいえば大変意義深い会だったと思います。「思います」というのは私が論点の大半を消化できなかったからです。コメントと応答は第一部のどちらかというとメタ倫理的な話(といっても一昔前の言語分析とか認識論ではなく形而上学中心で大変エキサイティング)に集中し、第二部、第三部の規範倫理・政治哲学の話は出てこなかったので、正直ついていけない話が多すぎでした。しかし正月休み返上で書かれたという江口聡・井上彰両氏のコメントも、前日か前々日だかに丸一日費やして書かれたという安藤氏のリプライも、いずれも大変力のこもった、少し手を入れれば立派な論文になる力作でした。
コメントとリプライで大半の時間がとられ、討論の時間はほとんどなかったのですが、最後の大屋雄裕氏の「この本の宛先は神なのではないか(しかしもちろん安藤は実在論者ではあっても無神論者である)」、そして井上達夫氏の「あくまでも禁欲的に書かれているが(そして今回の討論もそのレベルに集中したが)、また「モラリズム死ねよ(安藤原発言ママ)」と繰り返されているが、しかしやはり安藤には明確なある種のリベラリズム道徳が背後仮説としてあるのではないか」という二つの感想がなかなかに心温まりかつ示唆深いものでした。
それにしてもこの会のインパクトがこのまま関係者だけの記憶と記録の中に埋もれてしまうのはもったいないですから、どなたかここをご覧の雑誌編集部の方は、ぜひこの三人に連絡をおとりになって、『統治と功利』書評特集をお組みになっていただきたいと存じます。
私的追記
ぼくは個人的には安藤の「時点主義」「現在主義」を動学的最適化モデルで描かれるような現在価値最大化論のアナロジーで捉えていて、また過去の功績を織り込まない立場をサンク・コストの無視とのアナロジーでイメージしていた。しかし(安藤には直接聞けなかったが)原谷直樹氏によると、前者は基本的に誤解らしい。何となれば、動学的最適化モデルは時間を通じた主体の同一性を最初から前提としている(安藤の「時点主義」「現在主義」はそれと比べたときパーフィット的な人格還元論である)から、だそうだ。
難しい。
追記(1月18日)
江口聡氏レジュメ。
http://melisande.cs.kyoto-wu.ac.jp/~eguchi/papers/ando_governance.pdf