ジョン・ローマー@一橋大学・報告

①12月14日(木)16時30分〜18時 経済理論ワークショップ(磯野研究館2階・研究小集会室(Room215)): A dynamic approach to human welfare: Sustainability
②12月15日(金)9時半〜12時 集中講義 1(4F): Economic development as opportunity equalization
③12月15日(金)14時〜16時半 集中講義 2(4F): Racism and redistribution
④12月18日(月)9時半〜12時 集中講義 3(4F): Democracy, education and equality
⑤12月18日(月)16時30分〜18時 現代規範理論研究会(4F) :The veil of ignorance is anti-prioritarian
⑥12月20日(水)16時〜18時 公開講義(東側、マーキュリータワー3203室):Prospects for equality in market economies


 ①のテーマは世代間倫理を射程に置いたサステナブル・ディベロップメント。Overlapping Generationsモデル使用。誰だローマーがマクロやってないって言ったのは。(俺か。)
 ②のテーマは分配的正義。労働経済学者と共同での実証研究の成果。誰だローマーが(以下略)。OECD加盟国のパネルデータを利用して、所得分配における本人の努力効果と生育環境効果を識別する試みを体系的に行う。その際環境変数のひとつとして母親の学歴を用いるなど、教育関連の変数に特に興味を示す。①の報告においても、人的資本(知識)の蓄積は社会的厚生にきわめて重大な影響を及ぼすファクターとして位置づけられている。
 ③はローマーが独自に開発した投票・政党間競争理論(ダウンズの古典的モデルの欠点を改良し、適用範囲を広げたもの。John E. Roemer, "Political competition", http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0674021053/interactivedn-22)をもとに、アメリカ・フランス他における、マイノリティへの再分配政策に対する投票行動の効果について実証分析を試みたもの。
 ④は、同じ政党間競争理論を教育投資政策に応用したもので、やはり理論的分析だけではなく、人的投資における効率と公正をめぐって、カリブレーションと計量分析が展開されている。(John E. Roemer, "Democracy, education and equality", http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0521609135/interactivedn-22から、amazonの「なか見!」で第1章「Overview」をまるまる読むことができる。)
 ⑤は簡単に言うとロールズ、ドゥウォーキン批判。ドゥウォーキンの「仮説的保険市場」論を簡単にモデル化して、そのモデルでは「格差原理」の正当化はできないと指摘。主体のリスク回避度がよほど大きくないとダメ。(ロールズのマクシミンはそのように想定してるように思われるが、そうした想定自体が正当化を必要、とローマーは主張。)
 ⑥には行ってません。

追記(2007年1月14日)

 ⑥のレポート:
http://d.hatena.ne.jp/Sillitoe/20061220/p2