すが秀美『1968年』(ちくま新書)

 前著『革命的な、あまりに革命的な』を読んで「これじゃ全共闘「勝ち組」(本来の意味での「勝ち組」つまり日本の戦勝を信じていた南米日本人移民)じゃねえか」とうんざりした(その上持ち上げられていた岩田弘『世界資本主義』を読んであまりのトンデモに更にうんざりした)ので読まなかっただが、O出版のO氏に薦められて読む。
 なんだか全然別の本じゃないですか。非常に面白い。前作では空回りしていた小熊『民主と愛国』批判も今回は説得的になっている。べ平連背後のソ連の影についての考証はスリリングだし、シニシズムとしての内ゲバの分析は圧巻。「市民派」「党派」「ノンセクト」のいずれに対しても鋭いメスが振るわれている。
 昔から気になっていたことのひとつに、多くの左翼があまりにもあっさりソ連崩壊を他人事として祝福できていた、ということがあった。既存党派だけではなく、「市民」「無党派」でさえ、実は社会主義に心情的に依存していたはずではなかったのか、と。その問題について自分は、塩川伸明やコルナイを手がかりに、「人間の顔をした社会主義」との関係で解釈してきたのだが、本書は「反帝反スタ」であったはずの新左翼市民派の根底にあったある不気味なものを、もっと具体的に抉り出している。
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