講義

本日の講義(社会学史)をもとに

岸政彦・北田暁大・筒井淳也・稲葉振一郎『社会学はどこから来てどこへ行くのか』という本は日本の社会学の現状についてのよもやま話であり、「社会学は地味な学問なんだから地味にやろうよ」というメッセージを派手にやっているという変な本ですが、その背…

機能主義についてのメモ(「理論社会学III」@筑波大から)

これをしゃべったというよりはあそこで思いつきでしゃべったことの敷衍である。 ======================== 「社会学の基本形はロバート・K・マートンにあり」――つまり彼の言う意味での「機能主義」「中範囲の理論」にこそ、社会学の極意はある。あえてそう…

「理論社会学I」(@筑波大学)配布資料より

http://d.hatena.ne.jp/shinichiroinaba/20120615/p2 の続きとして読んでいただきたい。 実は以上に述べてきたような意味での「全体性」の理解を前提にして初めて、『入門』で触れた「方法論的全体主義」=社会学的「全体論」の意味も、更には、『入門』巻末…

中江兆民『三酔人経綸問答』評

ゼミでしゃべったことをもとに。 ================== 中江兆民『三酔人経綸問答』という本の切迫感とアクチュアリティを支えているのはその独特の問答体、三人のキャラクターが、それぞれある程度一貫した政治思想的なスタンスのみならず、人格的な個性、肉…

おもいつきでしゃべったこと

大したことではない(別段独創的ではないし文献学的には間違いも含んでいるだろう)が一応メモ。 =============== 17世紀あたりを近代社会科学の出発点とし、トマス・ホッブズやジョン・ロックで代表させるのは、彼らが「自然状態」という理…

「社会学2」講義メモ(10月11日分)

本日の範囲:教科書 第2講「「モデル」とは何か」社会学入門 〈多元化する時代〉をどう捉えるか (NHKブックス)作者: 稲葉振一郎出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2009/06/26メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 18人 クリック: 224回この商品を含むブロ…

「社会学2」講義メモ(10月4日分)

本日の範囲:教科書 第1講「理論はなぜ必要か」社会学入門 〈多元化する時代〉をどう捉えるか (NHKブックス)作者: 稲葉振一郎出版社/メーカー: NHK出版発売日: 2009/06/26メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 18人 クリック: 224回この商品を含むブログ …

「社会科学基礎論に関する2,3の話題提供」@東大社会学 メモ

この間昔の講義ノートを読み返したら、さして進歩していない――というか、今回の講義では実はそれほど新しいことが言えてない……あと1回最後の補講に何を積み込めるのか……。===================== ヘーゲル『法の哲学』における「市民社会」という言葉遣いは、…

「社会科学基礎論に関する2,3の話題提供」@東大社会学 メモ

今日あたりから思想史に……。 ==================== 今日の「市民社会」という言葉、これは英語の"civil society"、フランス語の"société civile"、ドイツ語の"bürgerliche Gesellschaft"におおむね対応すると言ってよいが、その構成員を…

「社会科学基礎論に関する2,3の話題提供」@東大社会学 メモ

ここまで「全体性」という語をやや不用意に用いてきたので、すこし反省してみよう。 通常の社会科学の理論的探究においては、人間性を所与(基本法則と初期条件)、そして説明変数のレベルに置き、社会的現象をそこから導き出される被説明変数と置くことが多…

「社会科学基礎論に関する2,3の話題提供」@東大社会学 メモ

社会科学の自然科学と比べた時の特徴として、「対象の複雑性」が挙げられることがしばしばあるが、物理化学的対象、生物的対象の挙動もしばしばきわめて複雑であり、それが決定的に彼我を分かつとは言い難い。そこにおいても回顧的な視点でしか全体性が獲得…

「社会科学基礎論に関する2,3の話題提供」@東大社会学 メモ

ドナルド・マッケイ、カール・ポパーらの非決定論によれば、たとえ物理世界が完全に決定論的な因果法則に支配されており、それは人間の心的作用においても同様であるとしても、人間は他人の振る舞いを完全には予測しきれない。何となれば、予言破りはつねに…

「社会科学基礎論に関する2,3の話題提供」@東大社会学 メモ(25日追記)

『社会学入門』「社会学の居場所」においては、対象を支配する一定の法則の具体的内容を前提として、そこから対象のふるまいを予測しようとする姿勢を「工学的」、それに対して対象を支配する未知の、しかし一定の法則の存在を仮定し、その法則の具体的内容…

「公共政策論」講義メモ

あんまりぱっとしないな。 ======================== 以上のごとく考えるならば、ハーバーマスが「公共性の構造転換」と呼んだものは、どのように理解されるべきか。 非常におおざっぱに言えば、市民革命によって個人が解放され、19世紀は経済的にも政治的に…

「公共政策論」講義メモ

第一の転換、自由な市場経済のシステムとしての自立においては、公共圏と私的領域との区別は未だ物理的、空間的な性格を失ってはいない。商品経済という新たな領域がその間に、これもまた物理的、空間的な実体としてさしはさまる、という理解ができなくはな…

「公共政策論」講義メモ

ミルをベンチマークとして市民的公共圏の理念について考えてみると、近代市民社会の経済的側面は私的所有と契約の自由を基盤とした自由な市場経済に、政治的側面は思想の自由・表現の自由とその基盤としてのパブリック・フォーラム(自由で安価な出版とジャ…

「公共政策論」講義メモ

まあこの辺は『「公共性」論』の焼き直しですが。 ======================= ハーバーマス自身の議論をストレートに受け止めるならば、「公共性の構造転換」は非常にありふれた議論であり、マルクス主義社会科学の土俵においてはそれは「自由主義から帝国主義…

社会学を志望しようかなと思っている大学受験生のために(2011年度版)

今年も模擬講義の季節がやってまいりました。 とりあえず埼玉県立越谷北高校の皆さん、お約束のバージョンアップ版です。 再来週は都立三田高校に参ります。 ========================== 社会学は経済学や政治学と並んで「社会科学」の仲間とされていますが…

「公共政策論」講義メモ

我々は市民社会の構成契機として、財産所有者としての市民たち、その市民たちの被保護者・被支配者としてともに家や団体を構成する人々、市民たちの財産、そして公共圏のインフラストラクチャー、を見てきた。ロック的な視点をとるならば、こうした市民社会…

「公共政策論」講義メモ

公共領域、公共空間、「市民的公共圏」としての都市と都市間交通網を無視するわけにはいかないが、ハーバーマスの視点はそこにはあまり向けられない。ハーバーマスが重視するのは、そしておそらくはロックの場合もそうなのだろうが、文字言語を介したコミュ…

「公共政策論」講義メモ

ロックを現代的な意味での「市民社会」のパラダイムとみなすことには以上みたように十分な理由もあるが限界もある。更にここではもう一つ、ロックにおける「都市」観念の希薄ないしは不在について注意を喚起しておきたい。 ロックの『統治二論』テキストを走…

「公共政策論」講義メモ

市民社会は個人、あるいは、自然人のことをしか「個人」と呼びたくなければ個体の集合体ではあるが、それ自体は個体ではない。ではこの市民社会を構成する「個体」とは何であろうか? 実はそれは、ただ一人の自然人個人をしか含まない場合においても、通常は…

「公共政策論」メモ

昨日のエントリに補足。多くの場合、ハーバーマスの言う意味での「市民的公共性」の成立、すなわち近代的な意味での「市民社会」概念の成立の過程は、中世から近世までの身分的団体秩序が解体し、そこから個人が解放される過程として描かれることが多い。も…

「公共政策論」メモ

今日しゃべったことをもとに。無断引用は禁止ですよ。================== この講義では最終的には「政治」のぼくなりの定義を与えることを最終的な目標としているが、さしあたりはテキスト『「公共性」論』の前半に即する形で、「市民社会」の概念について考…

都立青山高校模擬授業「社会学入門の入門」

またしても用意したレジュメと全然関係ないことをしゃべったよ。即興でしゃべったことを基にここに書いておくよ。 ========== 社会学は経済学や政治学と並んで「社会科学」の仲間とされますが、日本の大学では大体社会学科は(もちろん、社会学部のないとこ…

「公共政策論」メモ(続)[12月4日文献補足]

ホッブズ、ロックはこの自然状態をあくまでも彼らの主題の前提として提示しただけで、それ自体を対象として主題化しなかった。ではその課題はどこに持ち越され、どのように発展していったのか? 結論的に言えば、本格的にはアダム・スミスの『国富論』におい…

「公共政策論」メモ(続)

近代的な「政策」という観念が意味を持つためには、古典的な意味での公私二分法が崩れなければならない。しかしそれは単なる区別の後退、縮退、先祖がえりという風に考えられるべきでもないだろう。一つ注意しておくべきは、「自然状態」という概念の実質的…

「公共政策論」メモ(続)

少なくともここでわれわれは、古代人や中世人においては、民主政的なそれには還元しきれない、政治的な正統性の観念があったことを確認しておかねばならない。そして民主的ではなくとも、正統な支配の下では自由人はその自由を奪われたことにはならない、と…

「公共政策論」メモ

うだうだしてる間にもう次は明日だよ。 ================== 「政策」を中心に政治を考えるというやり方は、我々自身を政策の――ひいては政治の「客体」とみなすやり方である。しかしながら今日の我々が大学で学ぶ「政治(学)」においては、我々自身をあくま…

「公共政策論」メモ

なんかぎごちないが。 ================== 「政策」という言葉を「公共」からいったん切り離して理解することを試みよう。 すでに指摘したとおり、今日でも例外的に民間主体の営みに「政策」なる呼称が与えられる領域の一つが、企業の人事…