メモ

昨日の記事への補足

言わずもがなのことではあるが、自律型知能ロボットにとってなぜヒューマノイドであることが重要なのかといえば「自律型知能を持つためには身体を持った社会的存在であることが極めて重要らしい」からである。社会的存在でなければ合理的行為者にはなりえず…

自律型ロボット倫理の応用問題

以前「自律型ロボットの倫理学の基本格率」なるものを思いつき、その議論は『「資本」論』と『オタクの遺伝子』で少し敷衍したのだが、その後グレッグ・イーガンだの飛浩隆だのを読んだうえで更に考えたことを少しメモしておく。 浦沢直樹『PLUTO』は、最初…

「制御社会」

人文書院のサイトで連載されている北野圭介『制御と社会――欲望と権力のテクノロジー』でございますが。 ドゥルーズ以来のles sociétés de contrôleを「管理社会」よりも「制御社会」と訳そうという提言はなかなか興味深いですが。 「制御」という言葉は、む…

リベラルな教育(続)

今日いわゆる「リベラリズム教育学」が言われるときに多く持ち出されるのは学校その他現場レベルでの教育方法の話ではなく、プロパーでいえば教育行政学というか、教育政策論の政治哲学的なお話であり、大概の場合はまさに「ロールズ産業」といいますか、社…

アイマス2騒動資料

いや、ファンが「ゲームとしては不出来だ」とここまであからさまに断言している例を不勉強にしてこれまで見ていなかったので。

リベラルな教育?

「「リベラリズム教育学」というものは存在しえないのではないか」と以前研究会で話したことがある。 無償かつ強制的な公教育というものについて考える。リベラルな教育というものはこのような公教育を肯定し、なおかつその内容については統制を可能な限り廃…

Acemogluのサイトを久しぶりに覗くと

とんでもないことになっている。 http://econ-www.mit.edu/files/4689 http://econ-www.mit.edu/files/5244 あれだけ論文量産してさらにこんな講義ノートまで作って、この生産力人間業じゃねえ……。 追記 中身をみると既出の教科書とかなり重なっていてちょっ…

25日の保健医療社会学会定例研究会について

まああれですね、演者のお話をちゃんと聞いて、そのうえでそれを踏まえた質問をするというのは、研究者としてのというより社会人としてのマナーではないかと思いますがね。 本を読まずに来たことについては百歩譲ったとしてもだね、人の話は聞こうよあんたた…

産業社会論

いわゆる「新自由主義」のインパクトが強烈過ぎたため、そしてこれと関連して、「現存する社会主義」の経済体制が崩壊したため、我々はかつての――19世紀どころか20世紀の過半までの保守主義が、必ずしも経済的自由主義、市場重視の立場と親和的ではなかった…

Property matters. Government matters.

ということだったのですよ要するに。 産業社会論の時代、収斂理論の時代というのはAdministration/Managementの時代であって、それは何かというと"Property/Government does not matter so much."の時代だったということで。 ポスト社会主義時代というのは非…

「神的暴力」について

たしかレヴィナスが「形而上学に倫理学が先行する」という趣旨の発言を何度かしていたと思うが、それはあまり正確ではない、あるいは今日風の言い回しとは違う、という気がしている。あえて言うならばそれは「形而上学と倫理学に神学が先行する」とでも言う…

「国民の教育権」で

「もおええわ」状態の人もたくさんおられるようですが、憲法学サイドの批判的議論だと教育の権利と自由作者: 内野正幸出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 1994/05メディア: ペーパーバックこの商品を含むブログ (3件) を見る表現・教育・宗教と人権 (憲法研究叢…

思いつき(続)

有徳な人格の陶冶とはすなわち規律訓練である。フーコーの統治性論と徳倫理学とはある意味ですんなりつながる。 政治的リベラリズムにおいて人格は超越論的対象であり、権力のターゲットは行為である。それに対して、古典的な意味での規律訓練権力はまさに人…

サンデル講義は

本とテレビとどっちが有意義で面白いか? 『Voice』稿を見ていただければお分かりのようにぼくの意見は「テレビ」。ただし舞台裏にまで想像をめぐらせることができれば、だが。本自体はどちらかというと凡庸ですよ。

ベンヤミンのいう「神話的暴力」と「神的暴力」の違いは

要するにオタクの遺伝子 長谷川裕一・SFまんがの世界作者: 稲葉振一郎出版社/メーカー: 太田出版発売日: 2005/02/26メディア: 単行本(ソフトカバー)購入: 2人 クリック: 16回この商品を含むブログ (49件) を見るでいうところの時空犯罪とその不可能性にあ…

佐々木輝雄祭り(承前)

佐々木輝雄職業教育論集 (第3巻)作者: 佐々木輝雄出版社/メーカー: 多摩出版発売日: 1987/01メディア: 単行本購入: 1人 クリック: 13回この商品を含むブログ (7件) を見るの第3編、死の直前の講義録「職業訓練の歴史と課題」だけを読んだ上で佐々木輝雄職業…

言うておきますが

「社会主義の教訓」と「資本主義の教訓」とは「どっちもどっち」ではありません。決定的に非対称的です。 「どちらがより多くの人命を犠牲にしたか」を言うてるのではありません。 我々は――体制としてみれば――資本主義なしではやっていけないが、社会主義なしで…

思いつき

・功利主義その他の厚生主義――為政者、立法者、テクノクラートの立場:一般市民は客体 ・カント的自由主義(権利論、契約論、含む一部の共和主義)――集団的自治の主体としての既に自立した市民の立場 ・徳倫理学的共同体主義――自立していない者たちを自立し…

石川健治「Workplaceと憲法」(『法律時報』2009年11月号座談会報告)

座談会25頁中丸々6頁(補足も入れると8頁強)を占めて座談会における話題提供というよりそれ自体で1本の論文になってます。何という俺様ぶり。 最高裁の「職業」論(「薬事法判決」「小売市場判決」) ・人格の発露 ・社会的機能分担 22条1項の「職業…

石川健治関連

思想 2010年 05月号 [雑誌]出版社/メーカー: 岩波書店発売日: 2010/05/01メディア: 雑誌 クリック: 5回この商品を含むブログ (3件) を見る所収の「〈非政治〉と情念」も飛ばしてるが法律時報 2009年 11月号 [雑誌]出版社/メーカー: 日本評論社発売日: 2009/1…

「占有」って何?

遠藤著を読んでいると、「占有権」というものをどう考えるかというのが実は民法上のみならず憲法上もすごく重要であるような気がしてきたのだが……。 結局のところ人権というのはある種の身分のことに他ならず、身分というのは財産と不可分である。(身分とは…

政治poliltics・統治government・行政administration(承前)

イマニュエル・ウォーラーステインの世界システム論は経済理論としてみたときにはもはや到底真面目に相手にするに足るものではないが、政治理論ないし法理論の土俵にパラフレーズしてみるならばまだ救いがいがないでもない。ウォーラーステインは世界システ…

政治poliltics・統治government・行政administration

もう採点は終わってしまったのだけど、東大教育学部での講義のまとめのために、メモ。 今日の日本語では「政治」という包括的な上位概念のもとに、理論政治学(システム論)・政治過程論風の言い回しを用いれば「入力input」にあたる狭義の「政治」=公共的…

東京大学教育学部教育学特殊講義「統治と生の技法」

今日でおしまい。後でなんかまとめを書くかも。 (承前) このように個人−自然人ではなくむしろ法人まで含めた主体−身体一般に照準する統治として新自由主義が捉えられているとしたら、それは自然人や家族に照準する古典的自由主義に比べてもなお一層、人を…

古典を読む意味

北田暁大さんとのトークイベントやシノドスのセミナー(いずれもそのうちシノドスメルマガに出ます)で「社会学ってやっぱり半分人文学だよね」としゃべって以来逆に「じゃあ理系にとって古典は意味がないのか?」と気になって。 通俗的な科学史科学哲学科学…

「教育」と「学習」の非対称性・非対応性

「教育」と「学習」とは必然的には結びついていない。人間は(そして多くの高等動物も)学習することなしにはおそらく生きてはいけないが、「教育」を受けることなく生きていくことはできる。 「教育」はせいぜい「学習」のための条件を整えること以上のものではな…

今更ながらアダム・スミスに学ぶ

というか『国富論』における学校教育にかかわる議論を整理する。 ・スミスは厳密に言えば人的資本論者ではない。彼によれば無給の徒弟制の人的投資効果は見かけだけのものであり、技能習得は基本的にはlearning by doingがもっとも効果的と考えている。learn…

東京大学教育学部教育学特殊講義「統治と生の技法」

*フーコーの「ネオリベラリズム」観 フーコーが「新自由主義は古典的自由主義への回帰ではない」と断じる理由について考えるためには、オルドリベラリスムスなど大陸ヨーロッパのそれではなく、アメリカ合衆国、つまりはシカゴ学派経済学についてのフーコー…

シノドス田中・宇野対談感想

内容的には面白いのだが、なんというか、お二人の被害者意識の強さには辟易する。 田中さんはマンガ批評界に無視されているわけだが、別に彼らに他意や悪意があるのではなく、ただ単に不注意で不勉強なだけでしょう。 宇野君は角川ニュータイプが上野俊哉を…

 「無能な者たち」をめぐって

http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/12/post-e7c7.html 「無能」にまつわる小玉重夫の議論は言うまでもなく田崎英明『無能な者たちの共同体』を踏まえたものであるが、田崎の語り口は小玉のそれに比べるともう一段ガードが堅い。 小玉の語り口…